第246首 ずっとそばに最初からそばに

名人戦とクイーン戦が共に、まさかの運命戦。周防の表情には笑みが浮かんでいる。

あと一枚 かるたができる この楽しい時間が もう少し続く

廊下も騒がしくなり、部屋に行くのを渋る太一に、花野が急かす。

「運命戦 怖がってるだけじゃないんですか!? 自分が怖いから」

千早は「たち」と「せ」で、どちらの札を送るか、どちらも出る気がする、と迷う。

来るのは どっち…?

原田先生を真似て、立ち上がって場の空気を呑む。手を広げたところに、太一がちょうど入って来た。

「せ」は太一の得意札。「たち」は太一の名前の札。小学生の時、新はこうも言った。

「たち」が「たいち」に聞こえるし 下の句の「まつとしきかば」が「ましま」に見える

千早と、太一が入室してから同じく目で追っていた新も、相手に「せ」札を送った。


周防は考える。

綿谷くんはやっぱり思ってる 「読まれない札」は「せ」だと

西田が気付く。

「札合わせだ チームちはやふるの札合わせだ」

空札が続いて98枚目まで読まれ、次こそが決着の札。若宮は自分ならば「せ」を自陣に残す考えでいたので、送られた札を手にした時は勝利を確信していたが。

崇徳院 うちを呼んで あんたと一生つきあい続ける たとえ一人でも

しかし、小倉山荘の襖に貼られている百人一首は、いつも対だった。千早の好きな「ちは」の対となっていた一首は。


千早の脳裏には、部室に二人で畳を運び入れた情景。小学生の時は新と、そして太一もいて。

太一 ずっとそばに 最初から そばに

「たち」が読まれ、千早が取る。若宮も手を伸ばしたが、持って行かれてしまった。

待って 待って 千早待って 頂上に行くのは うちや うち一人や

若宮が見上げた先で、千早が彼女の手を取り、二人で山の上に立つ。遠くに富士山が見える。


新も「たち」を取った。皆が見守る中、下の句が読まれる。

いなば山の峰に生えている「松」の名のように あなたがたが私を待っていると聞いたら すぐにでもかえってこよう

かくして、新名人と新クイーンが誕生した。

ちはやふるTOPPO

memo

クイーン位は千早、名人位は新に決定。肉まんくんから「チームちはやふる」という言葉が出て来たが、当時そこまで見て覚えているものかと疑問。菫が太一に「自分が怖いから」と指摘する場面といい、他人の口を都合良く借り過ぎ。最後は富士の高嶺に立つのではなく、まだ世界が広がっているよ、という演出か。

千早が空気を呑み込む仕草は、原田先生が前年に、第113首で東西戦前、第118首での新との試合中、第131首の名人戦四戦目でも行っていた。第194首の挑戦者決定戦の試合直前では、千早が原田先生に断りを入れながら実践している。その後の白波会をおざなりにしていた感が気になっていたので、原田先生との繋がりを改めて示してくれたのが私も嬉しい。そして、千早が手を広げた先に、太一の姿がすっぽり嵌る構図が良い。構図といえば、「最初からそばに」で千早が思い浮かべているのは、小学生千早の向かいに太一が座っているのに、千早は立っている新を見上げている様子。

高校二年時最後の第136首から数度に渡り太一という名前に触れられて来たのは、語感から「たち」札を連想しておいて、という前振りだったらしい。初見は忘れたが、イラストかファンブックの類でとっくに認識済みだったのと、太一母あたりが名前の由来をいずれ語るのだと考えていたので、何だか拍子抜け。

襖絵の話は第224首に説明があるが、襖一枚に歌が二首、壁一面だと八首で、それが四部屋とのこと。一部屋に付き32首、四部屋で128首という計算で、28首分足りなくなる。歌が一首しか貼られていない襖があり、そのせいで歌番号16と17が襖一枚になっているらしい。

読まれた空札は「これやこの」「うらみわび」「よのなかは」「ほととぎす」。


最終首は読了しましたが、更新は次号発売が近付いてからの予定。現在は過去のmemoを加筆修正中。

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