第228首 熱意をつないでいってもらいたい

第三試合が始まっているのに、大盤係の田丸の準備が遅れていて、大慌ての花野。やっと現れた田丸だが、桜沢先生の言葉を思い返し、浦安の間の空気に呑まれる。

あなたもここに来るんでしょう?

大盤に札を並べてみると、千早の思考がとめどなく溢れて来て、視界が歪む。

千早が九頭竜の読みでよく動けている、と若宮が気に掛け始める。

思惑がわかる 全部じゃないけどわかる がっぷり四つ バランスを崩したら 落ちるしかない崖の上で

名人戦は周防が連取。周防はC級優勝した大会で、九頭竜の読みを体験していた。九頭竜の読みに美学があると感動したらしい。

名人になったなんて あの変わり者の もの好きな青年が

「ありあけの」を、周防と千早が取る。「ありま」もあるのに、二人とも二字目で取った様子。新も若宮もそれぞれ、山を張っていたわけではなく、分かって取ったのだと気付く。千早も周防も、九頭竜の音源を思い浮かべている。

鳴らせ 鳴らせ 響かせろ 響かせろ あの計算ずくのくせを 波長を

「あ」の札が続くが、周防は九頭竜の美学として、二字目のコンマ秒の単位まで解説を聞いてあった。千早も駒野と大江がくれた音源で、準備が出来ている。


田丸が遅れたのは、大江の方が大盤係にふさわしいと言い出したからであった。大江は諭す。

「千早ちゃんの夢をご存じですか クイーンになること… 『かるたの強豪 瑞沢高校』です だから後輩を選んだんです 皆さんに戦う姿を見ていてもらいたい 熱意をつないでいってもらいたいんです」

田丸は目の前の試合に見入る。

見ろ 見ろ この景色を 思考を 勇気を 一番近くで

新は苦戦。周防に五連取されていた。九頭竜の読みは初めてだ。

大山札以外 下段は全部 周防さんが一字で取りにくる なんや そのイメージ

悪いイメージに捕らわれながらも、囲い手の下手な周防から取る。

名人になるんや 名人に

心でそう念じるが、目の前の周防を見て、息を呑む。次の札で周防は空振り。周防は兼子が会場内に居ないと見て、外側に散っていた札を内側に集める。新が周防の弱点を確信。

目なんだ 目なんだ やっぱり

周防がやり方を変えたのは初めて。

プライドはあるんだ 僕だって 本当はこんなことしたくない でも 見にきてくれてるんだ 親より大事に思ってる人が 名人位が必要なのは 僕のほうだ

memo

三試合目中盤。準備が出来ていた千早と周防、出来ていない新と詩暢、ついでに田丸。新は試合前に読んだ太一からのメールをヒントに周防の弱点に気付くが、その対策については未だ描かれていない。

登場した札は「さびしさに」「あらしふく」「わすれじの」「やえむぐら」「うらみわび」「いにしえの」「ありあけの」「あきのたの」「はるすぎて」「やすらわで」「わたのはら・こ」「あわれとも」。

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