第225首 人は人のためにしか本気で祈れない

千早は以前、深作先生に何でもいいから学びなさいと諭された。

学問を 他者を 理解しようとする営みだけが 見えない繋がりを浮かび上がらせてくれるのだから

若宮も小さい頃から百人一首を学び、札と親しんで来た。そこに入り込んで来たのが千早。

来るな

千早が苦手としていた大山札を、若宮の囲い手を破って取った。若宮は茫然自失。

千早の目に敵陣右の「つく」が浮かび上がるが、次に詠まれた「あらざらん」を千早が敵陣左から取る。送り札は「おおえ」。それら繋がりのある札が敵陣に揃っており、千早の攻めがるたが生きている。

若宮が千早を見る。札の神様が囁いている。

初めてやないの ここに来てくれた人

控室で眠っていた千歳が目覚める。テレビ画面には真剣な表情の千早。千歳は枕を抱え、こっそり外へ。一方、太一と坪口が近江神宮楼門に到着。太一は参拝しながら、新に送ったメールを思い返していた。

新 気づいてるかわからないけど 周防さんにはハンデがあって それでもおれは周防さんが現時点での競技かるたの最高峰にいると思う でも だからこそ 新に勝ってほしい
競技かるたに愛されてるのに どうでもいいっていうような手の放し方をする人だ 競技かるたを好きな人間に 周防さんは負けてほしい

名人戦側は周防が一枚リードを許し、須藤は焦る。

周防さん…… まだ動かさない? 判断が遅れたら 2試合目も落としてしまう

やっと周防が札を移動させようとするが、兼子が観客席に現れ、止めてしまう。


太一は長く手を合わせた後、もう一度参拝。

結局人は 人のためにしか本気で祈れない
千早の夢が叶いますように 伸ばした手がなにかをつかみますように あの子が苦しい涙を流しませんように

顔を上げた太一の目に、廊下を並んで進む千早と新が映る。新は前を見据え、千早がこちらを見て微笑む。幻影が消え、帰京しようと踵を返した太一の前方を、千歳が歩いていた。

観戦せずに帰った太一のことを、坪口は考える。

近江神宮は 天智天皇は 人のためにばっかりがんばる君を 見てるよ

クイーン戦は、若宮が一枚、千早が四枚。千早が追い上げている。千早の視界には「たれ」と「ゆう」。素早い反応で「たれ」を払った。次に視界に浮かぶ上がったのは「ひとは」だが、その上に置いた「め」が詠まれ、僅かな差で若宮に取られてしまう。

三枚差で負けた千早は、素足のまま雪降る外に出て涙。

迫った 詩暢ちゃんの強さの核心の近くまでいった だからこそ 勝つためになにができるのか もうわからないよ――

memo

第二試合終戦。もう少し札が残っていれば、というところまで来た。全国大会個人戦の時は七枚差、今回の一試合目は七枚差、この二試合目が三枚差なので、確実に詰まってはいる。

太一のメールは余計だな。独白で済ませて、メールは「頑張れ」の一言で良かっただろうに。その内容で伝えたいのなら、せめて試合前日までに送ろうよ。試合当日にだらだらと曖昧だし、何だか太一らしくない。

太一が参拝中に思い浮かべる千早は、第27首で高校一年の全国大会個人戦で詩暢に負けた直後の「ああ今日だ いまやっと千早の夢が本物の夢に」、第8首の千早B級決勝戦、第79首の高校二年全国大会団体戦決勝、第21首で初めて近江神宮に来て皆並んで参拝した時の様子。

続いて太一が千早と新の幻影を見るが、第214首で描かれたこの日の朝の選手達の参拝だと、実際の千早は母や菫と田丸に囲まれており、新は何処に居るのか分からない状況。ただ、千早が羽織っているのはかなちゃんのコートで、太一が知る由もないが、幻影ながらも現実と同じ。また、その第214首の時に千早も幻影を見ており、参拝する太一がやはり微笑んでいた。千早が思い浮かべたのも、第21首での初参拝の様子で、太一と同じ。

千歳は枕だけを抱えて出て来てしまったが、自分のキャリーバッグは置き去りでいいのか? 後で母親に届けろとか言い出しそう。尚、第219首の京都駅での場面から既に、ハンドバッグ的な手荷物は描かれていない。

試合中に須藤が、周防はいつ札を動かすのかと気にしている。過去に周防がかるたと取っている場面、名人戦二年分、千早や太一との練習などを見返したが、そこまでは描かれていない。須藤とそのような練習を積んで来ているのかも。

詠まれた札は「きみがため・は」「あらざらん」「たちわかれ」「たれをかも」「めぐりあいて」。

第44巻終了。巻末漫画は、肉まんくんと机くんの太一の大盤係決め勝負。紹介されている和歌は第222首より、式子内親王の「たまのおよ」。