第224首 強靭な暗記

若宮は小さい頃から百人一首の本を読み漁っていた。例えば、藤原定家は障子一枚に二枚ずつの色紙を貼り、一つの壁に八枚で、それが四部屋。意味も人も工夫して並べられ。

千早は取った「もも」札を見詰め、若宮の強さの秘密を考えていた。

全部の札を狙ってるような速さで取れる秘密

千早からの送り札は、「もろ」と思いきや、一字決まりとなった「つく」。

この札は 詩暢ちゃんを呼ぶ?

和歌の意味と背景を競技に持ち込む大江について、以前は否定していたが、最近になって千早は西田と話していた。

「じつは ものすごく強靭な暗記の確認だったんじゃないかと思うの 知ってる? 百人一首って 2首ずつふすまに飾る色紙だったって」

今回の戦況を見て、大江が語る。

「ふつうの暗記に重ねて 『ひとも』と対になると言われる『もも』の札 同じように天皇筋の対の札『あきの』『はるす』 『はるす』はないのでこの場合は『あきの』 若宮さんはそういう細かい関連づけで 暗記を強化しているのではないですか……?」


千早は畳の上の札を確認。

ここにある残りの天皇の歌は 『つく』と『きみがため・は』

「たきのおとは」を取られたが、次の「よをこめて」を自陣左から取る。

いたたまれないから そろそろ読まれたいって 読まれるなら おちょくり相手の公任さんのあとがいいなーって

その声を盗み聞きさせてもらった、と千早なりに歌人と対話。

原田は目を見張る。

広範囲に自在に狙い札を持つ若宮クイーンの その瞬間の絶対取りたい札を潰しにいった いかにクイーンが常人離れした数狙えるとしても 絶対取りたい札はその中でもせいぜい2~3枚 より強い糸で繋いだその数枚 その糸を切る そんなことができるのか 千早ちゃん

千早が次の札を取り、送り札の「しの」を、因縁の「こい」の傍に置く。若宮はそれをいつもとは違う左側に置き直す。次の札は「しら」だったが、若宮が「しの」を払ってしまう。まさかのお手付き。千早からの送り札は「め」。

memo

第二試合中盤、攻略方法を掴み始めた千早。詩暢は今回「しの」を左側に置いたが、第209首で描かれた詩暢の配列表だと右下段の内側の方にある。

途中、千早と詩暢が向き合う様子に、原田先生の弟子の女性が前年の名人戦を思い浮かべ、「この感じ…」と何かに気付いた様子が描かれている。その場面は第128首で「原田先生が見せようとしてくれてる本物の」という太一独白が付いており、今回は構図から千早を指していると思われる。

肉まんくんが家庭教師をつけている描写もあるが、ガハハ系でうざいw こんな押しつけがましい家庭教師なんて実在するのか、という疑問もあったが、作者の旦那様がプロ家庭教師らしい。デフォルメされているにせよ、参考にしている部分はありそうだ。

もう一つの疑問は、「つくばねの」の札で筑波が俺の札と言った時、「そうなの?」と波田が言ったところ。苗字全ての音が入っているのに、今頃それはないだろう。

読まれた札は「たきのおとは」「よをこめて」「ながらえば」「しらつゆに」。