第217首 強い敵は強い味方

近江神宮で試合前の参拝が始まる。千早がふと新に目を向けると、新と新祖父の顔が重なって見えた。試合会場に入室する際、無数のフラッシュが炊かれ、千早は緊張のあまり真っ白。

京都駅に到着した大江は、千早父を発見。更には西田と駒野、瑞沢の後輩達、宮内先生もそれぞれ現れる。電車の乗り継ぎへと急ぐ大江が、太一に似た後姿を視界に捕えた。その後、新の携帯電話に太一からのメールが着信したが、新は既に畳の上。

陣決めでは、若宮が四年連続となる紫式部「巡り逢ひて」を引く。つまり、清少納言の「夜をこめて」を引いた側は、四年連続で負けている。一瞬言葉に詰まる千早だが、札を見て穏やかな表情。

大江が皆に、紫式部と清少納言の話をする。

「本当は邪魔 本当は不愉快 千年経っても二人一緒に並べられてかたられるなんて 耐えられない ――って少なくとも紫式部の方は 思っていそうなんですけど 清少納言は あらゆるものを表現し祝福し楽しんだ清少納言が この未来をおもしろがってないはずないんです」

札を並べていた千早の手に「ちはやふる」の札があった。並べ終え、札の上で風を切るように手を伸ばす千早。その様子を見ていた若宮の目に、札の神様達が嬉しそうに囁いている。

あら この子 知っとるわ また会ったわ ふふふ 勝つ気なんか あんた ふふふ おもしろい子

千早は集中している。

暗記 暗記 つながれ つながれ ずっとそう思ってきたけど こんにちは またみなさんに会いにきました この手が 今日みなさんを迎えにいくこと どうぞご了承ください

しかし、素振りや暗記をするより先に、プレス用写真撮影という段取りが設けられていた。取る札や払う方向を指定され、勝手の違いに戸惑う千早。若宮は慣れたもので、自分の動画チャンネルの宣伝までやってこなす。

スノー丸グッズ会社の丸井が、かつての同僚で同業他社、ダディベアグッズ会社の熊野と再会。二人で観戦部屋の朝日の間に座っていたところに、ダディベアのぬいぐるみを抱えた子供達を連れた猪熊が到着。がらがらだった部屋に、悪天候で到着が遅れていた観客が続々集まり始める。若宮へのプレゼントでスノー丸のぬいぐるみを抱えたファン、千歳目当てのファンまでいる。

大江の話が続いている。

「おもしろいですよね いかに紫式部が清少納言を嫌っても あらゆる分野において 強い敵は 強い味方です」

第一試合が始める。その動画を見ている太一は、京都の観光案内所前――

memo

陣決めの札に、千早と詩暢の関係や性格を絡めた話。受験組も何だかんだで皆来てしまったが、かなちゃんは机くんにも話していなかったのか。彼等より先、かるたに疎くて方言を話す正体不明の人物が、タクシーで近江神宮に向かっている。誰かを待っているらしき太一と擦れ違いになっていそう。太一はそのせいで試合途中まで見れなくなりそうな流れ。尚、千歳は描かれていない。この二人が合流すればちょうど良さげ。

千早が新と新の祖父の姿を重ねて見ている。しかし、高校一年の春に福井の綿谷家に行き、仏壇の顔写真を一度見た程度であろう。永世名人として有名なので、何かの資料で見ている可能性もあるが。祖父の顔を覚えていて心象で見えたのか、どっかのジイサンが憑りついている的な意味で見えてしまったのか。普通に考えれば前者だろうが、千早が新祖父の功績を気に留めていた描写もなかったし、唐突に思えてしまった。

千早の試合での「ちは」札は、ちょうど第100首、高校二年時の吉野会大会での猪熊戦以来。その猪熊と渡会と第208首で練習した際の会話で、「ちは」が無かったから勝ち上がれた、との台詞があった。猪熊戦で手放し、そして今回久しぶりに畳の上に現れる「ちは」。この「ちは」は取れるのか。

強い敵は強い味方。第19首にあった太一の「ずっと連れていくいちばん近い味方」という台詞を思い出させる。

第42巻収録分はここまで。私は電子書籍版で購入しているが、この巻から表紙折り返しの歌や作者コメント面も添付してくれるようになった。作者によると、背景に描かれているのは撫子で、花言葉は「大胆」「純愛」「貞節」。紹介されている歌は、第216首の周防とキョコタンの場面で登場した「いにしえの」。巻末漫画は無く、作者SNSで載せていた各キャラクターの誕生日などを描いたイラスト集となっている。