第212首 あっちをかき回してきて

千早のSNSが話題になっている。千歳も勧められて、姉妹ツーショットを投稿してみた。いつも反響数は千くらいなのに、二万を超えた。妹はスター性があると、周囲のスタッフから好反応だが……。

若宮の最新動画は、新が撮影したもの。若宮の表情に見入る千早。動画の主題は、歌番号で34と35で連続している「たれをかも」「ひとはいさ」について。

「わかりやすくいうと 陰気キャラと陽気キャラ だから絶対並べて置きません」

台本通りではあるが、ネット上のコメントも好意的に変化して来た。但し、若宮はまだ新に負け続けているらしい。新の強さに感心しつつ、千早は暗い表情。

京都だって近くないのに 二人で行き来してて

もしも試合後半自陣が一字決まりになったら、という想定で、猪熊と練習する千早。千早の送り札は「す」か「せ」で、「せ」を選ぶ。

「崇徳院の人生ってかなり不遇じゃないですか そのせいで長く京都で祟り続けてるって言われてて… 繧繝縁に座っている天皇の系譜の歌人は10人いるけど 一字決まりの中には崇徳院だけ……」

若宮ならばきっとこんな気持ちだ、と千早は想像する。

迎えに行くからいっておいで ついでにあっちをかき回してきて

時はクリスマス。電車内でも勉強する千早に対し、受験のない若宮と新。動画を観ていると、競技線からはみ出る新の頭を、若宮が押している。試合は「せ」と「みち」を持っての運命戦で、「せ」を守った若宮がついに新に勝利した。涙を流して喜ぶ若宮に、小石川と結川も感無量。

「勝って当然のかるた人生のクイーンが こんな こんなさあ…」

泣く若宮に触れようとする手を見て、千早は動画を途中終了させる。新は笑顔。

みんな どうしてるかな みんな どうしてるかな

机に向かう大江、予備校で講義を受ける駒野、クリスマス料理やケーキを頬張る西田、スマートフォン片手にパソコン画面に見入る太一。

千早は素足で、荒野を進む若宮を追う。

一人にしない 詩暢ちゃんに届くように 登るんだ 進むんだ

先を進む若宮の横に新が現れ、怯む千早……。


帰宅した千早を捕まえ、ツーショットを撮る千歳。あっという間に反応が増える。タレント活動する気があるかを問う千歳に、千早は素っ気なく「ないよ、興味」と断る。千歳は激高。

「私ががんばってるところで 私じゃないあんたが注目されるの ほんと迷惑 ほんと… かるたみたいなわけわかんないものしか大事じゃないくせに 中途半端なことしないでよ」

千早は涙を浮かべ、立ち尽くす。

クイーン戦ではクイーンが圧倒的に有利 挑戦者は初めてのことがたくさんふりかかって こなすほど進むほどに あんなにいた友も だれも なにもできない地に 一人で立つことになる

memo

試練を迎えた千早。SNSと言えば、前話冒頭で登場した周防が、不安が増すからSNSはやるな、と受験生に忠告していた。千早は結局ろくに更新していない様子で、電車での移動中に詩暢動画を観るのは許容範囲としても、詩暢アンチスレッドをチェックするのこそ余計だろう。また、千歳の気持ちは分かるのだが、自分で載せておきながら文句を言うな、と思ってしまった。

詩暢が住んでいるのは京都。因縁の「せ」札の説明でも、京都が登場する。更にはイメージ画ながらも「ついでにあっちをかき回してきて」。その通りに感情を掻き乱し、勝手にどつぼに嵌っている千早さん……

太一がパソコンで見ているのは、航空券の売り出し画面。飛行機の距離の大学を狙うのかと驚いたが、兼子ちゃん一族に贈る可能性もあるのだろうか。セレブならではの「役割」だな。

登場する札は、動画の蘊蓄で「たれをかも」「ひとはいさ」、千早の一字決まり練習での「すみのえの」「せをはやみ」、再び動画で「みちのくの」と「せをはやみ」。